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除蝗錄
総論
享保十七壬子年、蝗生ずる事甚しく、諸国の農家、是お患ふといへども、いかんともすべきやうなかりしとなん、滋に筑前三笠郡八尋(やひろ)氏某、我屋敷のうちに安置したる菅廟に詣て、蝗お除かん事お祈る、或夕御灯お捧むとするに、蝗火しく群て、灯明の油に飛入て死す、是お見て、油の蝗に大敵たる事お心付、田に油おそゝぎて試るに、須臾にして蝗の死する事火し、夫より昼夜精力お尽して、油お用ふるに、稲復び蘇り、其田実る事お得たり、実に霊神の冥助なりと、深く礼拝して事の趣お書残されし書あり、