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重修本草綱目啓蒙
二十八/化生虫
竈馬(○○) いヽきりご(○○○○○)〈備前○中略〉 はだかこほろぎ(○○○○○○○)〈加州〉 せんちこほろぎ(○○○○○○○)〈○中略〉 かまどむし(○○○○○)〈○中略〉 かまぎりす(○○○○○)〈尾州○中略〉 おかまこほろぎ(○○○○○○○)〈江戸○中略〉
秋夜竈辺、及び洗椀の処に出て、米麦の残食お拾ひ啖ふ、昼は陰僻に隠れて出ず、体長さ七分許、首は小く、身は大にして背隆し、頭尾低く櫛背の如く、微く馬の態ありて茶褐色なり、これおこめいひご防州と雲ふ、雄なる者は背に黒翅ありて、蟋蟀の如し、希に鳴くことあり、〈○中略〉雌なる者は翅なく鳴かず、倶にその鬚甚だ長く、六七寸あり、冬は竈中或は井内に蟄して寒お避く、〈○中略〉
○○○○○
附錄、促織、 いとヾ(○○○)〈京〉 こほろぎ(○○○○)〈和名抄、紀州、江戸、水戸、〉 はたおりめ(○○○○○)〈和名抄〉 きりぎりす(○○○○○)〈同上、和州、伯州、南部、信州、武州 の府中、〉 はやまる(○○○○)〈古歌〉 ちくろ(○○○) させ(○○) まくらのしたのきりぎりす(○○○○○○○○○○○○) ちヽろむし(○○○○○)〈共同上○中略〉 かたさせ(○○○○)〈南部〉 つヾりさせ(○○○○○)越後○中略 てづヽおどし(○○○○○○)〈詩経名物弁解○中略〉
いとヾは秋中庭間瓦石の下に、微し土お凹にして、其中に住す、長さ六七分、闊さ三四分、両鬚六足、足と身とは油色なり、雄なる者は背に薄き翅あり、長さ身に等し、色黒くして紋脈多し、飛ぶこと能はず、後の長足お以て跳り、或は闘ふ、その鳴くこと必ず立秋よりす、夜はこの翅お立てヽ、鳴く声高くして、りう〳〵と雲が如し、昼は雌雄同居して、鳴く声低小にしてつヾれさせと雲が如し、〈○中略〉大倉州志に里語雲、促織鳴懶婦驚と雲は、てづヽおどしの名に合す、漸く寒に向ふときは、漸く人家に近づく、故に詩の豳風に、七月在野、八月在宇、九月在月、十月蟋蟀入我床下と雲ふ、性善く闘ふ、故に唐山には闘蟋蟀の戯あ〈○中略〉り、一種原野に居り、昼鳴く者おこほろぎ京と雲ふ、古書にこほろぎと雲へるは、皆蟋蟀にして今のいとヾなり、故に今もいとヾおこほろぎと呼ぶ国々もあり、〈○中略〉その鳴く声清高にして抑揚あり、ころころの声六七返も重ぬる者お上とす、其鳴声聞べきこと、蟋蟀の声の厭べきに異なり、〈○中略〉
〓螽〈○中略〉
螽斯はぎす(○○)〈京〉きりぎりす(○○○○○)、〈畿内、勢州、大和本草、〉 はたおり(○○○○)〈大和本草、同名多し、〉 こほろぎ(○○○○)〈南部〉 ぎりちやう(○○○○○)〈江戸〉ぎつちやう(○○○○○)〈尾州○中略〉 ぎつす(○○○)〈東国○中略〉 原野に多し、五月より鳴く、ぎいすちよと聞へて、織機の声の如し、児童、樊(かご)に入れ、瓜の瓤お与へ、自ら鳴しめて玩とす、雌なる者は鳴かず、尾に曲れるけんあり、綠色褐色のに品あり、褐なる者は岡におりて能鳴き声高し、俗にあぶらと呼ぶ、あぶらぎつちやう(○○○○○○○○)〈尾州〉 ほんぎつちやう(○○○○○○○) あぶらぎりす(○○○○○○) 〈阿州〉綠なる者は竹林におりて声低し、やぶぎつちやう(○○○○○○○)〈尾州〉と雲、