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源氏物語
四/夕顔
はしぢかきおまし所なりければ、やり戸おひきあけ給て、もろともにみいだし給ふ、程なき庭に、ざれたるくれ竹、前栽の露は、なおかゝる所も、おなじごときらめきたり、虫のこえごえみだりがはしく、かべのなかのきり〴〵す(○○○○○)だに、まどおに聞ならひ給へる御みゝに、さしあてたるやうになきみだるゝお、中々さまかへておほさるゝも、御こゝろざしひとつのあさからぬに、よろづのつみゆるさるゝなめりかし、
○按ずるに、壁中の蟋蟀、花鳥余情に毛詩豳風七月篇蟋蟀入我床下お引けり、壁中床下相近き お以て通はし用ひしにや、