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古今要覧稿
虫介
松むし金琵琶 鈴むし〈金鐘児〉
松むし鈴むしの名、万葉集にはみえず、延喜の比よりぞ物にもみえたる、さてこの二虫の名、古今のたがひ有、延喜の比はちんちろりんとなくお松むしといひ、りんりんとなくお鈴むしといひけり、〈思岑ぬしの西河行幸和歌の序によりてしられたり、〉源氏物語の比よりこのかたは、りん〳〵と鳴お松むし、ちんちろりんとなくお鈴虫といふなり、〈諾書にみえたり、しかれども江戸及び諸国にては、今も古名おとなふるなり、京都にても近世はまれに古名な唱ふる人も有、〉