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蜻蛉日記
下の中
六月になしつ、ひんがしおもての、朝日のけ、いとくるしければ、みなひさしにいでたるに、〈○中略〉せみのこえいとしげうなりにたるお、おぼつかなうて、また見みおやしなはぬ翁ありけり、庭はくとて、箒おもちて、木のしたにたてるほどに、俄にいちはやうなきければ、おどろきて、ふりあふぎていふやう、よいぞ〳〵といふ、なは(○○)〈○なは、解環抄作なく、〉せみ(○○)木におるはむしだにときせちおしりたるよとひとりごつにあはせて、しか〴〵となきみちたるに、おかしうも、あはれにもありけん、