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重修本草綱目啓蒙
二十七/卵生虫
石蚕 いさごむし(○○○○○)〈古名〉 げな(○○)〈京〉 せむし(○○○) たんころぼ(○○○○○)〈和州〉 がむし(○○○)〈津軽〉 けら(○○)〈紀州〉
流水中石上の虫なり、背に小沙石お綴り負て石に附く、漁人取て釣餌とす、其虫は形小蚕の如く、浅黄色、長さ五六分、後羽化して飛去る、紀州木の本にて、已に化して未だ羽あらざる者お、みづけら(○○○○)と雲、羽お生じて飛ぶものお、とびけら(○○○○)と雲、一種粗砂お負て石に附く者は、虫の長さ一寸許、青黒色、後羽化してかねつけとんぼう(○○○○○○○○)となると雲、
一種細砂お綴りて小窠お為し、上の左右に粗砂各一塊お綴りて両袖の如し、下の左右にも各一塊お綴りて、米包お並ぶるが如し、頭に小砂一塊お戴きて石に附く、其形世に祠るところの大黒天の状の姑し、これお大黒むし(○○○○)と呼び、叉いはむし(○○○○)〈和州奈良〉と雲、長さ四五分、和州南都興福寺中小流にあるもの名産なり、諸州清流には、皆あり、然れども巧拙ありて、其倣仏たる者は少なし、長さ七八分なる者もあり、皆採て水お離れば、内の虫窠お出でヽ死す、 一種羽州方言ごみかづき(○○○○○)と呼者は、虫の長さ一寸許、細砂お以て細筒お為し、内に居る、石に附かず、両頭一般の大さにして、一頭より足お 出して行く、土人中の虫お取て釣魚の餌とす、以上皆石蚕類也、又石部に石蚕(みどりいし)あり、同名異物也、
附錄、雲師、雨虎 雲師は詳ならず、雨虎は薩州山中にあめふらしと呼ぶ者あり、雨中に出、形石決明に似て痩て殻なし、
増、薩州曾士考雲薩摩山中有虫、方言阿女不良士、状似海粉母、而其首如蛙、有肉角、全身黄褐色、大可五寸、天将雨則蠕蠕出於巌坎、蓋雨虎也、
按、広東新語作雨師、雲師又作雨師、如謂事物紺珠作雨虎、如蛹、