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今昔物語
十四
入道覚念持法花知前生語第十三
今昔、入道覚念、〈○中略〉法花経お受け習て、訓にして読誦しける、而るに経の中に、三行の文更に不被読、〈○中略〉覚念夢に気高く貴き老僧来て、覚念に告て雲く、女宿因に依て、此の三行の文お不読誦る也、女ぢ前生に衣魚(しみ)の身お受て、法花経の中に被巻籠て、此の三行の文お啖み失ひたりき、経の中にありしによつて、今人の身卜生れて、出家入道して法花経お読誦す、経の三行の文お啖失なひたりしに依て、其の三行の文お不読誦也、