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長門本平家物語

康頼入道〈○平〉是お御覧候へ、此島にはなぎは候はぬに、此葉の出来候はとて、少将〈○藤原成経〉に奉る、少将取て見て、あら不思議や、今は権現の御利生に預て、都へ帰らん事は一定なりとて、弥祈念せられけるに、康頼入道申けるは、入道が家には蜘蛛だにもさがりぬれば、昔より必悦お仕候、今朝の道に小蜘蛛の落かゝり候つるに、権現の御利生にて、少将殿召返されさせ給はん、次に入道も都へ帰候はんずるにやと思ひて候つるなり、