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鋸屑譚

凡魚の游ぎてみな水にさかひ、むかひてのぼる、いとちいさき魚も大水にあへば、かならず槍てのぼる、鳥の飛ぶも亦多く逆風、蓋鳥魚風水にさかへば、その鱗羽順ふ、須へば反りて逆ふ、人之生於困苦、而死於安楽、亦猶是、或曰、奥羽佐越等之魚肥大而味疎也、摂津播磨等江海之魚堅小而味濃也蓋此困労与安游之異矣、北海といへども亦如鮭鱒其味最美者、遡於長江而困苦すればなり、今按鯉魚のごとき、淀河に得るものお為第一、亦触於水車、困於急湍之故也、