大和本草

十三/魚

凡魚類其品甚多し、毎州有異品、不可窮尽、諸州の土地によりて異同あり、有無あり、形状性味亦不同、凡国俗所称品物之名字、誤認者甚多矣、就中魚名古来所称之文字、伝誤而非正者最多矣、可謂習而不察也、順倭名抄所載亦然、観者須精審柬択之、本草載河海魚品(○○○○)、寡而且不詳、故不審其性之良否者多、大抵気昧淡潔、脂少不甚腥者為佳品、不害人、気味濃腥、多脂者雖味美非良品、多食必害人、且魚肉餒、敗色臭悪者腐壊者不可食、海魚は久食して不厭、河魚は歷日而食へば易厭、味甘ふして塞気也、海より河に上る魚は、鰷、鱖膾残魚、大口魚等なり、本草所載諸魚、品数比他物、鮮少記海魚、最不詳、多闕考証、且諸魚お雑記して不分河海、淡水鹹水(○○○○)の所生、混同して分明ならず、別錄之中、往々海魚お沢中江湖に生ずと雲、観者弁別すべし、河魚(○○)の味美なる者は、鯉、鯽、鱖、鱒、鱸、鰷、鰻鱧、しくち、膾残魚等為上品、海魚(○○)の美なるは、鯛、鱸、大口魚、比目魚、きすこ、鯔魚、魴魚、華臍魚等為上品、