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貞丈雑記
六/飲食
一庖丁人の家にて雲、鯉の名所(○○○○)の事、うなもととは、頭の方より第一の背のひれ也、うびたとは、腹の方第四の右のひれなり、さひだとは、腹の方第四の左のひれ也、すぎさしのひれとは、腹の方第五のひれなり、ことゞめのひれとも雲、婚礼の祝には、ことゞめのひれおば、式三献の時にも用ざる事、庖丁人の故実なり、子おとゞむるといふ心にて忌也、懐姙の婦人、著帯の祝にも忌むべし、子おうみ出すこそよけれ、子おとゞむる事は忌む也、土ずりのみとは、腹の下の肥たる所の肉お雲、すんずりの身とも、つちずり共雲は、水底にいる時土おする所也、すんずりと雲も、すなずりと雲事なり、うすみとは、腹の方肉のうすき所おいふ、あつみとは、背の方肉の厚き所也、