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沙石集
一下
生類神明供不審事
江州の湖に大なる鯉お浦人とりて、殺さんとしけるお、山僧直おとらせて湖へ入にけり、其夜の夢に老翁一人来て雲く、今日我命お助け給事、大に無本意侍也、其故は徒に海中にして死せば、出離の縁かくべし、賀茂の贄になりて和光の方便にてしゆつりす、べく候なるに、命のび候ぬと、恨たる色にて雲けると古物語にあり、