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視聴草
五集九
板屋慶意話
一画工板屋慶意、十年前松平隠岐守殿世子立丸より梅の鉢植お送られしに、梅年々に衰ことしは花色も不咲なりしが、五月十九日四過、他の草花お植んとて、梅おぬかれしに、土塊のごときもの転び出したり、魚の形ある様なりとて、盆中に放したりしが、忽口明き一時計にして鱗尾鰭より鼻口等も、こと〴〵くそなはり、睫時動出し口より泡お吹き、遂に鯉となるに、六月初に至まで盆中に畜置たり、後糀町の御溝に放と雲、