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近世奇人伝

堅田祐庵
祐庵は北村氏、淡海堅田の浦の豪農にて茶事に熟し、物の味おしることは、いにしへの符朗、易牙にも恥ず、〈○中略〉一日京師にて茶事の友にあひたるに、名にしおふ源五郎鮒食せ給へといふに、さらばいくかにと契りて帰る、其日友人の至る時、其門鮒数十おとり入るお見るに、食につきて出したる所、はづかにして腹に満ず、友人あやしみて、さしもあまた取入給ふと見しに、是はいかにといへば、主笑ひて望たまふ所の源五郎鮒の真なるものは、数十の内にて一二お得がたしといへりとなん、