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源平盛衰記
十五
宇治合戦附頼政最後事
平家方より、伊賀国住人古市の白児熏とて、さヾめきて押寄たり、宮〈○以仁王〉御方より、渡辺の者共省、授、与、競、唱、清、濯と名乗合て散々に射、白児党に先陣に進戦ける内に、三人共に赤威の鎧に赤注附たりける武者、馬お射させて川中へは子入られて、浄ぬ沈ぬ流て宇治の網代による、秋の紅葉の竜田川の流に浮くに異ならず、網代に懸て弓筈お岩のはざまにゆり立て、希有にしてこそあがりけれ、源氏これお見て、
白児党皆火威の鎧きて宇治の網代に懸けるかな