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倭訓栞
前編二/阿
あゆ 年魚おいふ、日本紀に細鱗魚ともみえたり、愛すべき魚なれば名づくるにや、尾張愛知郡、相摸愛甲郡など皆あゆとよめり、南産志にいふ渓鰛也といへり、年魚の泥鰌に化せしお、親しく見し人あり、俗に鮎およむは和名抄に本けり、鮎はなまづなれども、神功皇后の年魚おもて占おしたまふによれるなりといへり、いまだ長ぜざる時に網お張て、杓もて汲お汲鮎と名く、あゆごわかあゆは春也、さびあゆ落あゆは秋也、三月頃海より出る、あゆごは別物也、こがねあゆは秋過るほどに出て、ちひさきおいふ、延喜式に火乾年魚、煮乾年魚、押年魚見えたり、白干鮎類聚雑要に見え、江次第に煮塩鮎も見ゆ、押は塩押おいふ、