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蒹葭堂雑錄

飛騨の国の山中に生ずる篠ありて、春の下旬にいたりて、篠の節よりして笋お生ず、其形恰も魚の如し、斯て五月雨ふりつゞく頃自ら落て渓に入、化して魚となり、水中お遊ぐ、是お岩魚(いはな)といひ、篠魚(○○)といふ、大概鱒に二年ばかり歷たるが如く、漁て食するに、味ひ又鱒に妨仏たりとそ、先年加賀の国人、渓水に竹の葉の半魚となりて、遊ぐお見しと語りしも、是等の類なるべし、