[p.1370][p.1371]
物類称呼
二/動物
棘鬣魚たひ 豊前にてへいけ(○○○)と称す、蟠竜子曰、鯛おへいけと雲は、平魚なるべし、延喜式に平魚、今按に東武にて弁慶鯛(○○○)といふ物お、肥前唐津などにては、へいけと呼、又土佐の海にへうだひ(○○○○)と雲、其子おへうご(○○○)と雲有、是も平魚の転語なるべし、
桜鯛(○○)〈堺鑑に、桜鯛泉州堺の名産なるよし見えたり、東武にても桜の花盛の頃此名有、〉麦藁鯛(○○○)、中国四国ともに四月出る鯛お雲、前の魚(○○○)、津の国にて称す、〈摂州西宮社前の海上にとる物お前の魚と呼、東武にて江戸前うなぎと雲が如し、〉甘鯛(○○)、畿内西国、東武共にあまだひ(○○○○)と呼、出雲にてこびる(○○○)といふ、関東にて興津鯛(○○○)と呼、〈駿州興津にて多く是おとる、鱗に富士のかたち有と雲つたふ、〉
鳥頬魚くうだひ(○○○○○○○) 東武にてくろだひ(○○○○)と雲、畿内及中国九州四国ともにちぬだひ(○○○○)と呼、
此魚泉州茅渟蒲より多く出るゆへ、ちぬと号す、但しちぬと尨魚(くろだい)と大に同して小く別也、然ど も今混じて名お呼、又小成物おかいず(○○○)と称す、泉州貝津辺にて是おとる、因て名とす、江戸にて は芝浦に多くあり、