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安斎随筆
二十
鱈 たらとよむ、此の字は字書になし、吾が国にて作りたる字なる故、訓ありて音なし、支那には鱈なきゆえ、文字もなきなり、朝鮮には此の魚あり、大口魚と名付く、亦一名口大魚と雲ふ、朝鱆人の著したる東医宝鑑と雲ふ書に、見えたり、たらと雲ふ字は、字書には本草類にも、支那の書になければ、漢名も正字もなきなり、我が国にては鱈の字お用ふべし、然るに鱈の字お不用して、朝鮮の大口魚口大魚の字お用ふる人あり、何ぞ我が国の字お捨てゝ、隣の、国の字お用ひんや、