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物類称呼
二/動物
鯔なよし〈此魚の総名也、世にぼら(○○)と雲、日本紀に雲口女(くちめ)これなり、〉 極小なる物お江都にておぼこ(○○○)と雲、〈東国に小児おおぼこと雲、故に此魚の小なる物お雲、〉加賀にてちよぼ(○○○)と雲、土佐にていきなご(○○○○)と雲、〈土州にてはいきなごお塩辛とす、銀びしことよぶ、〉小なるものお関西関東ともにいな(○○)と呼、〈いなは稲の茎くされて魚と成といへり、然る時はいなとは稲魚なるべし、いにしへは魚お魚(な)と称せしなり、〉洲走遠州にてはしり(○○○)と唱ふ、
漁人簀の四方に網お張て、是おとるお簀引と雲、因て簀走の名有、一説に此魚河と海との潮境 お往来する頃お賞して洲走の名有とぞ、江戸にては六月十五日より洲走と呼、十四日迄おい なと雲也、九月にいたり、泥味なく脂多くして、いよ〳〵味ひ美也、色又さらし洗ふたるが如し、 此時お畿内にてこざらし江鮒(○○○○○○)と称す、泉州堺の名産なり、
なよし、ぼら、伊勢ごい、長崎にまくち(○○○)と雲、勢州及尾張にてめうぎち(○○○○)と雲、
いせごいとは勢州鳥羽の海浜にて多く是おとり、又鯉に類するおもつて、いせ鯉と雲、関西の 称なり、東国にはぼらどのみ呼也、又まくちとは、上古くちめといひし詞の遺りたる也、めうぎ ちとは名吉(なよし)の音義お用たる也、