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庖厨備用倭名本草
八/魚
鱸魚 倭名抄にすヾき、多識篇同じ、考本草一名四鰓魚、なりあひ鱖(さけ)に似て色白く黒点あり、巨口細鱗にして四鰓あり、長さわづかに数寸、元升〈○向井〉曰、本朝先輩此数寸と雲により、鱸魚おあゆといへるは穏当ならず、本草註の如きは疑なくすヾき也、但長さ数寸のことは、筑後柳川の入江の海ざかひに、はくら(○○○)と雲魚あり、其形色数にて本草の説の如し、李時珍みたる鱸魚は此はぐらなるにや、是もすヾきの類なり、あゆは白色黒点に非ず、大小長短は土地異方のかはりにもよるべし、三尺の鱸魚お釣と雲古事もあるよし聞伝穴たり、
鱸魚味甘性平小毒あり、五臓お補ひ筋骨に益あり、腸胃お和し水毒お治す、鮓となし膾となして猶よし、日二曝しやはらがして香美也、肝腎に益あり、胎お安じ中お補ふ、食禁多食すれば病お生ず、肝お食すべからず、合食禁、乳酪と同食すべからず、鱸毒あたるには蘆根汁にて解す、