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重修本草綱目啓蒙
二十九/魚
鱸〈○中略〉
城州淀川、宇治川、武州小松川、相州相摸川、播州、紀州、泉州、勢州、尾州、参州遠州、駿州、房州、総州等東南の産最盛なり、西北海にも有れども、東南の美に及ばずと雲、然れども惟雲州松江の鱸名産なり、味も優れり、〈○中略〉雲州の城下お松江と雲、又呉松城と雲ふ鱸魚に因て呉の松江の名お取れるものなり、湖あり、大さ二里許、夏月湖中に於て鱸魚お取り、十月以後は湖より海暖に向ひ落るお取る、長さ五尺に至る者あり、湖は海お去ること数町に過ぎず、その間の川流瀬の早き処にて網お用て採る、十月の雷おすヾきおとしと雲、此時特に多し、その川に漁場三あり、橋本、中網、下網と雲、又海際に於て最密なる網お用て採お外網と雲ふ、凡鱸魚四時倶に出、然れども三月より七月に至るまで体肥ゆ、暑月出ること多くして、味亦佳なり、九月よりは体痩、故に他州にては暑中に賞す、惟雲州にては冬賞す、味亦佳なり、他州の産は大者は三四尺に至る、雲州の産は大者は五尺に至る、此其異なり、