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魚鑑

あぢ〈○中略〉 鱗なく蒼黒色、身中に一条の逆鱗あり、大さ一二寸より六七寸に至る、大なるもの尺に及ぶ、春の末より秋の末に至るまで猶多し、就中夏月ゆふがしのものお、酒媒の珍とす、大さ一二寸、肥円く腹中あみ満つ、これおなかふくらといふ、生熟皆香美なり、上下ともに賞美す、冬は痩て料理にあたらず、隻脂となす、又丸あぢあり、相似て劣り小毒あり、一種むろあぢ、播磨室の海に多し、ゆへにしかいふ、状円く肉あつし、脂につくるべし、房州布良より、その半乾のものお出す上とす、一種しまあぢ状あぢに似て、全身まなかつおのごとし、小なるおえのはといふ、庖丁家猶重んず、