塵塚談

下

鰯魚予〈○小川顕道、享保頃人、〉若年の頃は火しく取れしと見へて、毎日鰯魚多く来れり、四五十年以前より、いはし売迦逅来る也、五十年以前迄は、相州三浦三崎、安房国辺には、大網といふありけり、紀州辺の大商人、猟船数艘こしらへ、船はたらきの者数百人召抱置、鰯お取て油にしぼり、干鰯にして諸国へうり出し、鰯払底に成しゆへに取続がたく、皆々大網おしまひ、家居諸道具等までうり払ひ、国々へ帰り大網断絶なり、