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重修本草綱目啓蒙
二十九/魚
青魚 詳ならず〈○中略〉
朝鮮にてはかどお青魚と雲、〈○中略〉かど一名にしん、高麗いはし、筑前せがい、朝鮮房総常奥羽州殊に南部津軽蝦夷に多し、九十月より春二三月に至までとる、春とる者お良とす、冬とる者は油なし、大なる者は一二尺、形鯔魚に似て扁く、又青花魚に似て、眼大にして赤く夜光あり、鱗薄軟にして落やすし、捕れば速に自ら脱す、色青くして光あり、肉は脆く美にして紅色お帯ぶ細刺多くして鰛味の如し、炙り食味鰛魚に勝れり、或は鮓と為し、或は糟蔵す、南部方言かど、脊肉のみ乾たるおにしんと雲、全くひらきて乾したるお、はにしと雲、味美なり、津軽にては生なる者おにしんと雲、冬にしん春にしんの名あり、脊肉のみ乾したるおみがきにしんと雲、全く乾たる者は京師に来らず、脊肉の乾したる者は多く来る、賤民の食とし、又猫の食とす、其子おかずのこと雲、一胞細卵数なし、風乾して四方に出す、用て歳首及び嫁聚の祝具とす、子孫繁栄の義にとる、又かどのこの転語なりとも雲、数胞お合て形お正方にこしらへたるおよせと雲ひ、又よせかずのこと雲ふ、形扁長にこしらへたるおのしかずのこと雲ふ、呂氏春秋に魚之美者東海之鮞と雲は、かずのこなるべし、