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兎園小説
七集
金霊並鰹舟の事
ことし乙酉の夏のほど、鰹の猟のありしこと、むかしより多くあらざる事なりとて、右の房州の客の語るおきくに、〈○中略〉壱け処にて釣溜〈鰹の獲船お釣りためといふ〉十五艘或は廿艘ばかりづゝも出づる、中にもあまつは二百艘も出づるよし、凡一艘にて鰹千五百本二千本位づゝ、六月六日比より同十四五日比は、毎日打続き火敷猟のありし事、めづらしとてかたりしまゝ、筆のついでにしるしおきぬ、
文政八乙酉初秋朔 交宝堂誌