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甲子夜話
八十八
城の東方四里にして川原辺田蒲と雲あり、此処の漁夫、八月下旬より十月上旬の間、えそと雲魚お釣る、其処は馬渡島と雲ふ、ならび大島と雲の前なり、この海深きこと七八十尋、漁夫一手に約糸二筋お用ゆ、この作業の始りは、安永の始め、淡路の人この所に来り居て教たるとぞ、後やヽ其事に馴れ、今は甚利益お得、〈余錄完政三年〉