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倭訓栞
前編四十二/和
わに 神代紀、新撰字鏡に鰐およめり、四足ありて鼈の如し、首大に口闊く、利歯刃の如、人お食ひ虎お擊といふ、よて諺に鰐の一口といへり、春雨抄に、
世中はわに一口も恐しや夢に鮫よとおもふばかりぞ
かせわには鋸沙魚、猫わには狗沙魚也といへり、神代紀に熊およめり、又熊鰐とも見えたり、史正義鯀之羽山、化為黄熊入于羽淵といひ、発蒙記に、鼈三足曰熊と見えたれば、くまとは別物なるにや、洽聞記にも、鰐魚熊能制之、秋化為虎三爪、出南海と見えたり、