[p.1474][p.1475]
重修本草綱目啓蒙
三十/無鱗魚
鮫魚 さめ しやかぼう 一名海鯊魚〈通雅〉 潮鯉〈広東新語〉 皮、一名台 魚皮、〈千金方〉
鮫魚は、ふかの類なり、故に宗奭鮫魚沙魚形稍異而皮一等と雲ふ、沙魚はふかなり、鮫魚の形ふかに似て色黒く、沙ありて鱗なし、故に一名鯊ふかにも沙あり、故に通じて鯊と雲ふ、故に時珍古曰鮫、今曰沙と雲ふ、今唐山の俗称魴、台湾府志にも魴の字お用ゆ、鮫魚の鰭頭に近き者は翅の如し、尾に近き者は然らず、背上に鬣刺あり、目は青く頬は赤し、味甘なれども美ならず、佐州にては油お取る、今捕者大さ丈許に過ぎず、皮上に黒沙あり、細沙の如し、皮お剥曝乾し、用て骨角お治し、堅木お揩磨す、その剣範お飾る者はつかざめ(○○○○)と雲ふ、和産なし、年年舶来あり、八閩通志に、鮫鯊鼻長以蛟、皮可飾剣靶、俗呼錦鮫と雲ふ、其品一ならず、尖頭(ちやんば)お上品とす、おやざめ大小順なり、珠粗くして徴黄、玉蜀黍(なんばんきび)粒の如し、山東美(なんとめ)は大小順ならず、又狂〓(かすた)、谷さめ、礁閣(あいのもの)、はびろ、泥魴(うみこ)の品あり、その刀鞘お飾る者は鞘皮と雲ふ、縐紗(ちりめん)皮お上品とす、背ちりめん、わりちりめん、梅錦(ばつぱ)、錦魴(かいらぎ)、刺魴(せかいらぎ)、しもふり、産世奇(がんぜき)、花なし、川さめ一名うみご、南蛮ごろ、ひはら、えの尾、ぬきさめ、かはりがしぜき、唐松、かのこ、虎魴、青鯊、〈閩書〉大あいざめは駿州豆州にあり、小あいざめは豆州蒲原にあり、蒲原ざめと雲、魚小く皮薄く蛮産に及ばず、ころざめ一名あいころは、常陸及越後より出、常陸ころとも雲ふ、潜竜鯊(てふざめ)〈広東新語、きくとぢの脊にある大片お磨し成す、〉きくとぢ、〈蝶ざめの全身にある、小珠の花斑の形菊の如し、蝦夷より出、〉以上皆鞘皮の品(○○○○)なり、〈○中略〉若州の人言ふ、おなござめは油多くして味美なり、皮に白沙あり、淡乾して毎年禁中に貢すと、乾鮫、お貢すること延喜式に見たり、凡ふか類は皆腮五つに切れ、口は頷下にあり、