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古事記伝
十九
久治良佐夜流(くぢらさやる)は鯨障(さはる)にて、鴫羂(しぎわな)へ鯨の罹れると雲なり、如此譬たまへる意は、思ひがけぬ大軍の来て、小謀(ちひさきはかりごと)の違へるとなり、〈○中略〉さて鴫の小に対へて雲むには、大に猛き物は鳥にも獣にもあるべきに、羂に似つかはしからぬ、海物の鯨おしも作(よみ)賜へるは、徒に大なる物お択出賜へるのみにはあらず、此は此大饗の御饌物の中に、鴫と鯨とのありしに就て、即其物に寄て詔へるなり、〈然らざれば、羅に鯨は似つかず、〉