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近世奇人伝

中倉忠宣
夏冬は門戸お閉、書およみて、あへて人にまじはらず、四条高倉の南に独居せる時、〈○中略〉折ふし門お過る雑貨買有しおよびて、ありあふ衣服お銭壱貫文にうり、さて此銭のある限、鮪といふいおお買て、明くれたゞ是お喰て過せり、友だち折々うかゞふに、もの音もせねば、もし飢て死たるもしらずと、門の戸お破りて入て見るに、かの魚お喰ひて居しかば大にわらひぬ、