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魚鑑

ふぐ 崔氏食経に鯸䱌の字お用ゆ、一名ふくべ、下総銚子の俗とみといふ、これ江戸にてつぼうといふと同意なり、漢名河豚、綱目に出づ、これ又種類多し、虎ふぐは時珍黄縷ありといふものなり、まふぐは即斑魚、又綱目にいづ、しほさいは繃魚、時珍食物本草にみゆ、鹿の子ふぐ、目赤ふぐ一名苗代ふぐ大毒あり、又鮫ふぐは虎ふぐの一種なり、かつおふぐ青色、かつおのごとし、薩摩の海に産す、日向山中澗水出て、薩海に入る、その間五十里、急流の大河なり、海お距ること三里、両岸村落相列るところお河内川といふ、冬春の際に里人河に網して河豚お得るとなん、これ潮より淡水に入るものなり、関東は冬のみ食て春は珍とせず、長州雲州は春も猶食ふ、且その肝お食へども、終に毒に中るおきかず、蓋し風土によれるか、又はこふぐ漢名しれず、皮肉丁字様の骨ありて、周身に聚束す、東海希にあり、その肉お食ふ、島ふぐ頭円く身扁くして、沙皮鱗文あり、又黒円点あり、薩海に産す、或は狡児其皮お天竺流沙河の鯉の皮なりとて人お誑、これ刀鞘お飾のみ、すゞめふぐ海牛なり、本草原始にいづ、この類に鯛の婿の三八郎といふあり、又えびすだひともいふ、みのかけふぐ魚虎なり、綱目に出づ、その刺伏して蓑お著たるが如し、その刺の直立するものは、はりせんぼん、はりふぐ、これ繃魚の類なり、