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庖厨備用倭名本草
八/魚
海鷂魚 倭名抄に海鷂魚なし、多識篇におほとびうお、考本草一名召陽魚、海中に生ず、形鷂に似て肉翅あり、よく飛て石頭に上る、尾に大毒あり、物に逢ては尾にて揆て是お食ふ、其尾人おさせば毒甚しく死するも、あり、〈○中略〉元升〈○向井〉曰、此説おみれば、海鷂魚は俗に雲えい也、倭名抄に韶陽魚と雲あり、和名おこめと雲、海鷂魚の一名お召陽と雲、召と韶と音同じ、倭名抄の説に、韶陽魚は貌似鼈口ば腹下にありと雲々、是も亦本草の形盤の如く荷葉の如くと雲に同じ、然る時は海鷂魚はこめと雲うお也、又本草に鷂子魚といへるあり、嘴の形鷂に似て鱗なし、色は鮎魚に類す、尾はとがりて長し、風涛には風に乗て海上にとぶ、又鼠尾魚、地青魚あり、倶に肉翅あり、尾中に刺あり、食する時は刺お去て用ふ、又蕃踏魚あり、皆一類にして相似たり、元升曰、此説おみれば皆えい也、古は此魚おこめと雲けらし、
海鷂魚味甘鹹性平毒なし、人に益なし、男子の白濁膏淋玉茎澀痛お治す、歯尾ともに病お治する功あり、尾は毒あり、歯は毒なし、