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日本山海名産図会

海鰕(えび)〈漢名蝦魁、釈名紅鰕、えびは総名なり、種類凡卅余種、其中に漢名竜鰕といふは海蝦なり、〉
俗称伊勢海鰕と雲、是伊勢より京師へ送る故に雲なり、又鎌倉より江戸に送る故に、江戸にては鎌倉鰕と雲、又志摩より尾張へ送る故に、尾張にては志摩鰕(○○○)と雲、又伊勢鰕の中に五色なる物有甚奇品なり、鬚白く背は碧重のところの幅輪綠色、其他黄赤黒相雑、〈○中略〉
鰕の腸脳に属して、其子腹の外に在り、眼紫黒にして前に黄なる所あり、突出て疣子のごとし、口に鬚四つあり、二つの鬚は長さ一二尺、手足は節ありて蘆の笋のごとし、殻は悉く硬き甲のごとし、好飛で踊る、是海中の蚤なり、蚤亦総身鰕におなじ、
えびの訓義は柄鬚(えび)なり、柄は枝なり、胞といひ、江と雲も、人の枝、海の枝なり、蝦夷おえびしといふは、是毛人島なるになぞらへ、正月辛盤(ほうらい)に用ゆるは、海老の文字お祝したるなるべし、