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甘本山海名産図会

水母〈一名借眼公 海舌〉
諸州に産して備前殊に名産とす、又唐水母、朝鮮水母と雲は、肥前に産す、元は異国より長崎へ伝送せし物なれば、かく号り、今は本朝にも其法お覚えて製し、同く唐水母と称す、其製法は石灰と明礬とに浸し晒して、血汁おされば、色変じて潔白なり、又備前は櫪の葉お少し炙り、臼にて舂き、塩水に和し浸すなり、其外数種あり、中にも水々母、又色黒き物赤きものは皆毒ありとて、漁人これお採事なし、
形は蓮の葉お覆ひたるが如く、其辺に足の如き物めり、色は紅紫にて、眼も口もなく腹の下に糸のごとく、絮のごとく長曳く物あり、魚蝦かならず是に随附す、俗にこれが眼お借りて游ぐともいへり、故に借眼公の名あり、〈○中略〉是お採るには、九月十月の頃、海上に浮漂ひて流るお、舟より党(たま)網お以て採る、波荒き時は礒へうちあぐるもあるなり、