重修本草綱目啓蒙

三十/無鱗魚

䱱魚 一名〓魚〈正字通海中人魚〉 䱛〈同〓〉 〓〈同〓〉 魜〈共同上俗〉
人魚同名数品あり、次条の鯢魚も人魚と名く、此条の人魚は淡水に生じ、似鮎腹下翅似足者お雲、和産未だ詳ならず、稽神錄以下の文は海人魚なり、腰以下は魚身にして人頭なる者雌雄あり、三図会に出、大和本草附錄に、海女は海中まれにあり、半身以上は女人、以下は魚身なりと雲ふ、又全く人形なる者もあり、即徂異記の文是なり、華夷考に、海人魚東海有之、大者長五六尺、状如人眉目口鼻手足爪頭、皆為美麗女子無不具足、皮肉白如玉、無鱗有細毛、五色軽軟長一二寸、髪如馬尾長五六尺、陰形与丈夫女子無異、臨海鰥寡多取得之、養之於池沼交合之際与人無異、亦不傷人と雲ふ、大和本草附錄に、海人は在海中形全く人なり、頭髪鬚眉悉具足、手足の指水鳥の如く相連て水かきあり、不能言語、飲食お与れども不食、一種偏身肉皮ありて腰間に下り、垂袴のごとし、余は皆人也、地に上り数日不死と雲ふ、又広東新語に、大風雨時有海怪、被髪紅面、乗魚而往来、乗魚者亦魚也、謂之人魚、人魚雄者為海和尚、雌者為海女、能為舶祟、火長有祝雲、母逢海女、母見人魚、人魚之種族有盧亭者、新安大魚山与南亭竹没老万山多有之、其長如人、有牝、牡、毛髪焦黄而短、眼睛亦黄、面黎黒、尾長寸許、見人則驚怖入水、往往随波漂至、人以怪、競逐之、
人魚長六七尺、体髪牝牡亦人、惟背有短鬣微紅、知其為魚、間出沙塑能媚人、舶行遇者必作法禳厭、海和尚多人首鼈身、足差長無甲と雲ふ、人魚骨蛮名へいしむれる、蛮人将来る者贋物多し、薬鋪に貨する者は黄貂魚(あかえいの)歯及雞子魚(とびえいの)歯の形状にして、斜紋なるものなり、未だ真なる者お見ず、坤輿外紀に、有海馬、其牙堅白瑩浄、文理細如糸髪、可為念珠等物、復有海女、上体如女人下体為魚形、其骨為念珠服之、可止下血、二者皆魚骨中上品、各国貴重之と雲へり、