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傍廂
後篇
人名の魚 江戸の海には人名の魚あり、河豚の類にて、鯛の婿三八郎と、いふあり、所によりては源八と称する人もあり、又海中の石また空貝などに附きたる黒赤黄お帯びて、やはらかに丸き肉あり、貝の類なり、塩、又醤油など附け、焼きにして食料とす、是お新五左衛門といふ、所によりては、尻子玉といふ、いかにも尻子玉お聞きひがめて、新五左衛門といひ誤りしならん、肛門に似たる物になんありける、又鮫の類に角兵衛と雲ふあり、亀の類に正覚坊といふあり、笠子といふ魚お、安本丹と薬名およべり、鮒お源五郎、鰯おおむらといへるは、古き異名なり、