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重修本草綱目啓蒙
三十一/亀鼈
瑇瑁 通名〈○中略〉
玳は玳の俗字なり、舶来全甲の者あり、片々離るヽ者あり、〈○中略〉正字通に煮其甲柔如皮、因以作器と雲、小なる者も続合せて大にすべし、火にかくれば自由になるなり、世に誤てべつかう(○○○○)と雲、鼈甲は至て下品、首飾器物となすべからず、俗にまがひの櫛と雲は、亀筒(うみがめのかう)の斑ある処おもつて造る、朝鮮と呼ぶ者は番牛角お用て、黒斑お入たるなり、今は常牛の角お用ひ、又馬の蹄甲お用ゆ、玳瑁の形状は〓亀に異ならず、隻首鳥に似て觜あり、其甲十三片鱗次して、〓亀の隻一片にして、六角文ありて、水亀の甲の如なるに異なり、本邦にも小者あり、完保三年亥十一月、加州宮腰浦にて捕るもの、甲の径四寸、頭は鳥の如く、觜ありて下に曲る、甲は十三片重れり、四足は長鰭にして〓亀の如し、前鰭は長さ三寸にして、左右に中折し、鱗あり、向の方に四爪あり、後鰭は長一寸余、外の方に一爪あり、尾は長八分、亀の尾に比すれば粗なり、頭及甲版皆黒色にして赤斑文あり、版には小介殻多粘す、肉には甚油多し、その後石州にても小者お捕ふ、形色倶に異ならず、唐山よりも希に尺許の全殻渡る、