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新著聞集
十五/お智
亀死活おしる
本多隠岐守殿家来渡辺源兵衛、妻のいたはりに沼亀お喰せば、然るべき事にてと有ければ、亀六十ばかり取もとめ、庭の池に放ち入れ、用の時とり出すに、己々が穴おほり、深く隠れ居ければ、人お、多く池に入れ、方々捜りまはして、やう〳〵一つ二つとり出し、既に殺して与へける、され共病人ついにはかなくなりしに、その次の日より、亀ども池の汀にこと〴〵く出て、甲おさらしけり、〈○下略〉