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日本山海名産図会

鰒〈○中略〉
真珠〈漢名李蔵珍〉
是はあこや貝の珠なり、即伊勢にて取りて、伊勢真珠と雲て上品とし、尾州お下品とす、〈○中略〉あこや貝は一名袖貝といひて、形袖に似たり、和歌浦にて、胡蝶貝と雲、大きさ一寸五分二寸ばかり、灰色にて微黒お帯たるもあるなり、内白色にして青み有、光ありて厚し、然れども貝毎にいるにあらず、珠は伊勢の物形円く、微し青みお蒂ぶ、又円からず長うして、綠色お帯ぶるもの、石決明の珠なり、〈○中略〉尾張は形正円からず、色鈍(ど)みて光耀なく、猶小なり、是は蛤、蜆、淡葉(いかい)等の珠なり、附記
或雲、あこやといへるは、所の名にして尾張の国知多郡にあり、〈○中略〉新猿楽記には、阿久夜玉(あくやたま)と見ゆ、万葉集の鰒玉お、六帖にあこや玉と点ぜり、又近比波間かしはと雲貝より多く取得るともいへり、〈○下略〉