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重修本草綱目啓蒙
三十一/蚌蛤
真珠〈○中略〉
あこやがひは、一名そでがひ(○○○○)〈同名多し〉てふがひ(○○○○)、あこやてふがひ(○○○○○○○)、しんがひ(○○○○)、〈能州〉のぶつらがひ(○○○○○○)、〈同上〉たまがひ(○○○○)、〈土州〉しんじゆがひ(○○○○○○)、是容の説の珠牡なり、一名珠母、珠蚌、〈共同上〉銀母蠃、〈広東新語〉此品海中に産す、形方にして大さ一二寸、或は三寸許、肥前大村には、大さ六七寸なるもあり、外面粗糙にして、蠣房の如し、殻縁甚薄くしぶ紙の如し、質薄くして外面蠣房の色の如く、裏面は白色にして、青微紫お帯ぶ、大村の産は青多く、志州の産は白多し、磨礪するものは、薄縁自ら落つ、用て小楪に代ふ、雅趣あり、生なる者は殻外に五七分許の小者お負ふ、その磨礪するもの、浅青黒色にして黒斑あり、ひなづると呼ぶ、あこやがひの肉は、桃紅色にして、一辺に小聚毛ありて、淡菜の毛の如し、黒綠色にして光あお、此肉お食用とす、塩蔵して遠に致す、肥州の産、冬春は肉肥大なり、夏秋は肉至て少し、故夏月塩蔵すと雲、広東新語に、珠母肉作秋海棠或杏華色、甚甘鮮而性大寒と雲へり、又あこやがひの形の異なるもの数品あり、各俗称あは、又あこやがひの形にして、甚厚く大なるものおあつ(○○○○)がひと雲ふ、舶来あり、大なるは七八寸、厚さ七八分、銀色微青にして光あり、古人用て螺鈿とす、今の螺鈿は、皆千里光お用ゆ、〈○下略〉