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重修本草綱目啓蒙
三十一/蚌蛤
貝子 むまのくぼがい古名 たからがひ こやすがひ はがひまきがひ(○○○○○○○) たらひがひ(○○○○○) 子こがひ(○○○○)〈筑前〉 ちからがひ(○○○○○) やうかひ(○○○○)〈眼科書〉 一名海巴子〈黴瘡秘錄〉圧驚〈本草蒙筌〉 圧驚螺〈呉氏食物本草〉 海巴〈同上〉 白海肥〈附方〉 管貝歯〈東医宝鑑〉 螺巴〈東西洋考〉
海辺に多し、〈○中略〉その質光滑にして、厚硬紙お蚜るべし、背は微く隆に、腹は平にして、左右両辺より巻て内に向ひ、中央縦に小長竅お開く、左右みな歯刻あり、その色白し、又斑文あるもの甚多く、数百品に至る、古者貨貝〈説文〉而宝亀、夏后以玄貝、殷人以紫石、周則有泉貝、至秦廃貝行銭、〈正字通〉貝に大貝、壮貝公貝、小貝、不成貝の五等ありて、貝の長短により、直の斉からざること、正字通に漢食貨志お引けり、唐山にて上古宝とせしゆへ、貝の字おたからがひと訓ず、〈○中略〉
紫貝 やくのまだらがひ〈和名抄〉 こやすがひ 八丈がひ(○○○○) にしきがひ〈○中略〉
丹後、紀州、土州の海にあり、薩州及八丈島に産する者お上とす、大なる者は長さ三四寸、形は貝子に同じ、隻背上中央聳へ隆にして、質更に光硬紙お蚜るに堪ゆ、質は黒くして円白章明なり、形の小異お似て雌雄お分つ、俗に言ふ臨産の婦人これお持ときは、産し易しと、故にこやすがひと呼ぶ、貝子も亦代用すべし、因て貝子にも、こやすがひの名あり、