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竹取物語
中納言礒めかみのもろたかは、家につかはるゝおのこどものもとに、つばくらめすくひたらばつげよとの給ふお承て、何の用にかあらむと申、こたへての給ふやう、つばくらめのもたる、こやすの貝(○○○○○)おとらんれうなりとの給ふ、おのこどもこたへて申、つばくらめおあまたころしてみるにだにも、はらになき物也、たゞし子うむ時なん、いかでかいだすらんはう〳〵とか申、人だにみればうせぬと申、又人申やう、おほいづかさのいひかしぐ屋のむねに、つくのあなごとに、つばくらめは巣おくひ侍る、〈○中略〉まめなるおのこども、廿人許つかはして、あなゝひにいけすへられたり、〈○中略〉つばくらめも、人あまたのぼりいたるにおぢて、すにものぼりこず、〈○中略〉つかさの官人くらつまうと申翁申やう、〈○中略〉此あなゝひおこぼちて、人みなしりぞきて、まめならん人おあらこにのせすへて、つなおかまへて鳥の子うまん間に、つなおつりあげさせて、ふとこやすのかひおとらせ給なんよき事なるべきと申、〈○下略〉