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日本山海名産図会

鰒〈○註略〉
伊勢国、和貝浦、御座浦、大野浦の三所に鰒お取り、二見の浦北塔世と雲所にて、鮑(のし)お制すなり、鰒お取には必女海人お以てす、〈是女は能く久しく呼吸お止めて、たもてるが故なり、〉般にて沖ふかく出るに、かならず親属お具して、船お蕩(や)らせ縄お引せなどす、海に入には腰に小き蒲簀(かます)お附て、鰒三四つお納れ、又大なるお得ては、二つ許にしても泛めり、浅き所にては、竿お入るゝに附て泛む、是お友竿といふ、深き所にては腰に縄お附て、泛んとする時、是お動し示せば、船より引あぐるなり、若き者は五尋、卅以上は十尋十五尋お際限とす、皆逆に入て立游ぎし、海底の岩に著たるおおこし、箟(へら)おもつて、不意に乗じてはなち取り、蒲簀に納む、その間、息おとゞむること暫時、猶朝な夕なに馴たるわざなうとはいへども、出て息お吹ーに、其声遠くも響き聞えて、実に悲し、