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いほぬし
みなべの浜に、しりたる人の、みやまより帰るにあひぬ、同じうは、もろともにまて給へかしといへば、かへる人忍びて申給ふこともこそあれといへば、いほぬし〈○僧増基〉なにごとにかあらん、ものうたがひは、つみうなりとてひろひたる貝お手まさぐりに、なげやりたれば、ものあらがひぞまさるなる、かうなあらがひ給そとて、かうなのからおなげおこせたり、また浪にもうかびて、うちよせらるゝお、かれ見給へ、入ぬるいそのといへば、かへる人、こふる日はと、心ありがほにいへば、いほぬし、くまのおのづからといへば、浦のはまゆふといらふる、に〈○下略〉