諸家家業記

陰陽道 土御門陰陽道は、古来、賀茂、安倍、両家之職掌に候、賀茂家は幸徳井と称し、地下之者に候、安倍家は、元祖安倍晴明に而、当時之土御門家、則右晴明之末孫に候、中古より、堂上に被相成候、作去、陰陽道之事、今以賀安両家之職掌に相成居候、猶堂上地下之差別有之、依而土御門家は陰陽頭に任じ、幸徳井は陰陽助に被任候、近例、年暦おば幸徳井より調進有之候、作去幸徳井に而は、暦之中段之文お相定め書加候迄に而、一体之暦は、当時御改暦以来、関東に而出来候由、土御門家に而も、暦之儀関係無之と申に而も無之、既に、已前宝暦御改暦之砌は、土御門家に而出来候事候得共、当時に而者、暦之事は、強而関係不被致候由、猶関東之天文方等は、都而彼家之門人に相成候先規之由、彼家、当時陰陽道お主として、天変地妖等有之節は、勘文お奉り、古凶お密奏有之、禁中に而、御大礼被執行候砌は、御日取時取之儀、予彼家〈江〉被仰出、勘文お奉らしむ、且身固、反閉、其外御撫物、御祈等之事、時々被仰出、関東〈江〉も、御大礼之節は、御身固之事被勤、其余年々巳之日祓、名越祓等献上有之、并年筮と称し、其年之吉凶、冬至之日卜定、公武之家々〈江〉被指出候事なども有之候由、安倍之新家倉橋は、陰陽道之沙汰無之候、