[p.0063]
徒然草文段抄

はなひたる時といふより、尼が答の詞也、是は乳母がたのならはしに、其児のはなひたる時、かたはらの人、はなお合すとて、又くさめと雲也、もしはなおあはせざれば、其はなひたる児に害ありといひならはせり、其故に、今も守刀などに、鼻の糸とて、青き糸おつけて、児のはなひたる時、彼はなお合す代に、其糸おむすぶ也、此まじなひの心にて、此段お見侍るべき也、かの尼が詞に、はなひたる時、かくまじなはねば、死ぬるなりと申せばといへる、すなはち是也、其はなおあはせんとて、くさめ〳〵といひし也、