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台徳院殿御実紀
二十七
慶長十九年七月廿一日、この日大御所、板倉内膳正重昌ならびに金地院崇伝おめして、今度京大仏新鋳鐘銘、関東へ対し、大不敬の文辞あり、そのうへ上棟の日吉日にあらざるよし聞ゆ、早く鐘銘并に棟札の草案お進呈すべき旨、京へ申つかはすべしと御諚あり、〈(中略)〉〈世に伝ふる所は、この鐘銘は、僧清韓がつくる所にして、その文に国家(○)安康(○)、四海施化、万歳伝芳、君臣豊楽、又東迎素月、西送斜陽などいへる句あり、御諱お犯すのみならず、豊臣家のために、当家お呪咀するに似たりといふ事お、天海一人御閑室へ召れたりしとき、密々告奉りしといふ、この事いぶかしけれども、またなしとも定めがたし、いま後考の為、援にしるす、坂上池院日記、〉