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吾妻鏡
四十三
建長五年五月四日辛巳、今年端午良辰、当于壬午、必依可有御謹慎、御勘文〈故諸陵頭賀茂時定撰〉一通、并三種神符御護等、自仙洞密々被進、是則黄帝秘術也雲雲、去夜、到来于女房中、今朝内々進覧雲雲、勘文雲 五月五日丙午壬午に当る年、端午の神符お作りてかくれば、命百年おたもつ事、右本文雲、五月五日丙午壬午に当る年、赤紙おもちて、神符お作りてかくれば、寿百歳也、件神符と雲は、三徳也、一には辟兵符、此符おかくれば、鉾矢の難おのがれ、敵人お亡し、我身に向ふものは、おのづからほろぶ、二には破敵符、此符おかけぬれば、敵人あへておこらず、たとひ弓箭刀兵、我身に向ふといへども、害おなす事なし、皆悉くだけおる、三には三台護身符、此符おかくれば、三災九厄の病難おのぞく、三災とは、盗賊、疾病、飢饉也、此三難にあへども、一切恐なし、皆悉消除す、九厄とは、諸の厄難おのぞく事也、凡此三種の神符お造てかくれば、短命の者は命お百年のべ、敵人有るものは敵人お亡して、我身はつヾがなく、諸の厄難に逢たらん人は、厄難お消除し、禍殃おのぞく事、此神符の力にはしかじ、故に先例皆此日に当るごとに、此等の符お書て、御まもりに用ひらる、今年五月五日、既壬午に当る、仍先例にまかせて、公家おこなはるヽ、誠猶此符おかけさせ給て、百年の御寿命おたもたせ給候べく候、仍注進如件、 四月日