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安斎随筆
前編十三
一吉日凶日 日に吉凶はなき事也、吉日にも悪事おすれば、刑罰免れがたし、凶日にも善事お行へば褒賞せらる、吉凶は己が身より招くもの也、又婚姻の願など、主君に申上るに、主君より願の如く申付らるゝに、凶日に雲渡さるゝ事、其日凶日也とて、申渡おうけまじきとて、辞する事はならざる也、是にて考べし、暦に日の吉凶お記すは、吉凶もなき日に、強て吉凶お付たる也、吉凶に拘る事勿れ、予が相知りたる人の所にて、小児病ありしに、今日は朔日なれば、薬お呑しむる事いまはしとて、医師お招かざりしに、病急になりて、其日に小児死しけり、早く療治せば、死すまじきものお、物いまいして、却て如此の不幸にあへり、